1. はじめに(くり返すかゆみでお悩みの方へ)
公開日:2023-10-26/最終更新日:2026-02-11
「夜にかゆくて眠れない」「良くなったと思ったら、また同じところに湿疹が出てくる」「ステロイドを使い続けて大丈夫なのか心配」──こうした悩みは、アトピー性皮膚炎の患者さんからよく聞かれます。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能の低下と免疫の過剰反応がからみ合って起こる慢性の炎症性疾患で、お子さんだけでなく大人にも多い病気です。「慢性」ではありますが、近年は治療の選択肢が大きく広がっています。ステロイド以外の外用薬、注射薬、新しい内服薬など、保険診療で使える薬剤が増え、症状がほとんど気にならない状態(寛解)を目指すことも現実的になってきました。
皮膚科では、かゆみや湿疹の状態を確認したうえで、外用薬・内服薬・スキンケアを組み合わせた治療を組み立てます。向日市・長岡京市・乙訓エリアで「かゆみが治らない」「薬の使い方が分からない」「子どもの湿疹が長引いている」などが気になる方は、お気軽にご相談ください。
2. アトピー性皮膚炎とは(どんな人に多い?)
アトピー性皮膚炎は、強いかゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりをくり返す慢性の皮膚疾患です。
小児期の有病率は約10〜20%、成人でも20代で約10%前後という報告があり、決して珍しい病気ではありません。家族にアトピー性皮膚炎や喘息、アレルギー性鼻炎がある方(アトピー素因を持つ方)に多い傾向がありますが、体質だけで発症が決まるわけではなく、環境や生活習慣も深く関わっています。
幼児期に発症して成長とともに落ち着くケースがある一方で、大人になってから再発したり、思春期以降に初めて症状が出ることも珍しくありません。
3. 主な症状(部位・年齢で変わるかゆみと湿疹)
アトピー性皮膚炎では、次のような症状がみられます。
- 強いかゆみ(夜間や入浴後にとくに強くなりやすい)
- 赤み・ブツブツ(丘疹:きゅうしん)
- カサカサした乾燥(鱗屑:りんせつ/粉をふいたような見た目)
- ジュクジュクした湿疹(滲出性変化)
- かき壊しによる傷やかさぶた
- くり返す炎症で皮膚が厚く硬くなる(苔癬化:たいせんか)
- 色素沈着(炎症が落ち着いた後に茶色っぽく残ることがある。これはステロイドの副作用ではなく、炎症の後遺症です)
年齢ごとの出やすい部位
- 乳児期:顔(ほほ・おでこ)や頭から始まり、体幹や手足に広がることがある
- 幼小児期:ひじの内側・ひざの裏、首まわりに集中しやすい
- 思春期・成人期:顔、首、上半身を中心に広範囲に及ぶこともある
湿疹が左右対称に出やすいことが一つの特徴ですが、範囲には個人差があります。
注意
セルフチェックはあくまで目安です。「かゆい湿疹がくり返す=アトピー性皮膚炎」とは限りません。似た症状を起こす病気もあるため、自己判断で市販薬を使い続けるより、一度皮膚科で状態を確認しておくほうが遠回りにならないことがあります。
4. 原因・悪化因子(バリア機能と体質、悪くなるきっかけ)
皮膚バリアの低下とアトピー素因
アトピー性皮膚炎の背景には、大きく分けて2つの要素があるとされています。
- 皮膚のバリア機能の低下:水分を保つ力が弱く、乾燥しやすい。外からの刺激やアレルゲンが皮膚に入り込みやすくなる
- 免疫の過剰反応(アトピー素因):IgE抗体(アレルギー反応にかかわる抗体)を作りやすい体質。家族に喘息・アレルギー性鼻炎・アトピー性皮膚炎がある方に多い
バリアが弱い皮膚を通してアレルゲンが体内に入りやすくなる仕組みは「経皮感作(けいひかんさ)」と呼ばれ、食物アレルギーなど他のアレルギー疾患の発症にもつながる可能性が指摘されています。とくに乳児期は皮膚が未熟なため、湿疹を早めに治療し保湿で皮膚を良い状態に保つことが重視されている理由の一つです。
悪化させやすいきっかけ
- 乾燥(冬場・エアコン・長風呂など)
- 汗(蒸れや刺激。運動自体を避ける必要はなく、汗の処理が大切)
- ストレス・疲れ・睡眠不足
- 衣類の摩擦(チクチクする素材、タグ、縫い目など)
- ダニ・ほこり・花粉・ペットの毛
- 体調不良(風邪をひいたときなど)
- 石鹸・洗剤・化粧品などの刺激
- かき壊し(かく→バリアが壊れる→さらにかゆくなる悪循環)
すべてを完璧に避けるのは現実的ではありませんが、「自分はどんなときに悪くなりやすいか」を把握しておくと、コントロールしやすくなります。
5. 似た病気との違い(接触皮膚炎・脂漏性皮膚炎など)
「かゆい湿疹がくり返す」という症状は、アトピー性皮膚炎に限った話ではありません。
- 接触皮膚炎(かぶれ):特定の物質に触れた部位に赤み・かゆみ・水ぶくれが出る。原因物質を避ければ改善するが、アトピーと合併していることもある
- 脂漏性皮膚炎:頭皮・眉間・鼻のわきなど皮脂の多い部位に赤み・フケが出やすい。かゆみは比較的軽いことが多い
- 皮脂欠乏性湿疹(乾燥肌の湿疹):おもに中高年のすねなどに乾燥によるかゆみ・湿疹が出る。アトピー素因がなくても起こる
- 疥癬(かいせん):ヒゼンダニの寄生による感染症。夜間の激しいかゆみが特徴で、指の間や手首などに小さな発疹が出る。見逃されやすい
- 手湿疹(主婦湿疹):手指のかゆみ・ひび割れ。アトピー素因がある方は悪化しやすい傾向がある
見た目が似ていると自己判断では区別が難しく、対応も変わります。「市販薬を使っても良くならない」「別の病気かもしれない」と感じたときは、皮膚科で確認するのが確実です。
6. 受診の目安(早めに相談したいサイン)
次のような場合は、皮膚科での相談をおすすめします。
- かゆみで眠れない日がある
- 湿疹がなかなか引かない、またはくり返す
- 市販の保湿剤・かゆみ止めで改善が乏しい
- かき壊しが広がっている・ジュクジュクしてきた
- ステロイドの塗り薬を使っているが、量や頻度に不安がある
- 顔や首の赤みがなかなか引かない
- お子さんの湿疹が長引いていて心配
早めに受診したいサイン
皮膚が広い範囲で赤くなっている、発熱を伴う、ジュクジュクが急に広がった、目のまわりの湿疹がひどいなど、ふだんと違う強い症状があるときは早めにご相談ください。
7. 検査・診断
アトピー性皮膚炎の診断は、主に次の情報をもとに行います。
- 湿疹の見た目と分布(左右対称か、年齢に特徴的な部位か)
- 経過(慢性的にくり返しているか──乳児では2か月以上、それ以外は6か月以上が目安)
- かゆみの有無と程度
- 本人や家族のアレルギー歴
必要に応じて血液検査を行うこともあります。
- TARC値:アトピー性皮膚炎の炎症の活動度を反映する指標で、治療効果の判定にも使われます
- 総IgE値・特異的IgE検査:アレルギー体質の有無や、特定のアレルゲン(ダニ・花粉・食物など)に対する反応を調べます
ただし、血液検査はすべてのケースで必要というわけではなく、症状や経過に応じて判断します。検査の数値だけでアトピー性皮膚炎の診断が確定するわけではありません。
8. 保険診療での治療選択肢
アトピー性皮膚炎の治療は、日本皮膚科学会のガイドライン(2024年改訂)にもとづき、「薬物療法」「スキンケア」「悪化因子への対策」の3本柱で進めます。
保湿(スキンケア)──治療のどの段階でも基本
皮膚のバリア機能を補い、乾燥やかゆみを軽減するために、毎日の保湿は欠かせません。
- 入浴後はできるだけ早く(5〜10分以内が目安)、保湿剤を全身に塗る
- ヘパリン類似物質、白色ワセリン、尿素製剤など、肌の状態に合わせて使い分ける
- 症状が落ち着いているときも保湿は続ける(バリア維持のため)
- ローション・クリーム・軟膏などの剤形があり、塗りやすさや季節に合わせて選べる
外用薬(塗り薬)──ステロイドと非ステロイド
湿疹が出ている部位には、抗炎症外用薬で炎症をしっかり抑えることが治療の基本です。
ステロイド外用薬
- 皮膚の炎症を抑える効果が高く、治療の中心となる薬です
- 強さは5段階(ストロンゲスト〜ウィーク)に分かれ、部位や症状に応じてランクを調整します
- 「ステロイドが怖い」と感じる方もいますが、医師の指示のもとで適切に使えば安全性は高いとされています。塗り薬の場合、内服で懸念される全身的な副作用(成長障害・糖尿病など)は通常起こりません
- 長期連用で皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)などの局所的な副作用が出ることはありますが、塗る間隔の調整で回避が可能です
- 「黒ずみ(色素沈着)はステロイドのせい?」と心配される方がいますが、これは炎症が長く続いたことによるもので、ステロイドの副作用ではありません
- 自己判断で急にやめると再燃しやすいため、量・頻度・やめ時は診察で一緒に確認しながら進めます
非ステロイド外用薬(ステロイドを含まない塗り薬)
近年、ステロイド以外の抗炎症外用薬の選択肢が増えています。顔や首など長期的に薬を使いやすい部位や、ステロイドからの切り替え時に選ばれることがあります。
- タクロリムス軟膏(プロトピック®):免疫抑制作用で炎症を抑える。塗り始めにヒリヒリ感が出ることがあるが、皮膚の状態が良くなると軽減する
- デルゴシチニブ軟膏(コレクチム®):JAK阻害薬の外用剤。刺激感が比較的少ないとされる
- ジファミラスト軟膏(モイゼルト®):PDE4阻害薬。2歳以上で使用可能
- タピナロフクリーム(ブイタマークリーム®):AhR調節薬。2024年に登場した新しい作用機序の外用薬
症状・部位・年齢に応じて、ステロイドと非ステロイドを使い分けたり組み合わせたりして治療を進めます。
内服薬(飲み薬)
- 抗ヒスタミン薬:かゆみを和らげる補助的な目的で、外用薬と併用することがあります
- シクロスポリン(ネオーラル®など):16歳以上の最重症例で短期的に使われる免疫抑制薬。血圧・腎機能のモニタリングが必要です
生物学的製剤・JAK阻害薬(中等症〜重症の方に)
外用薬だけでは十分にコントロールできない中等症〜重症の方には、注射薬や新しい内服薬が保険診療で使えるようになっています。いずれも「最適使用推進ガイドライン」にもとづき、適応基準の確認や事前の血液検査が必要です。
注射薬(生物学的製剤)
- デュピルマブ(デュピクセント®):IL-4/IL-13を抑える。2週間に1回の自己注射が可能(生後6か月以上)
- ネモリズマブ(ミチーガ®):IL-31(かゆみに深く関わるサイトカイン)を抑える(6歳以上)
- トラロキヌマブ(アドトラーザ®):IL-13を抑える(15歳以上)
- レブリキズマブ(イブグリース®):IL-13を抑える(12歳以上)
内服薬(経口JAK阻害薬)
- バリシチニブ(オルミエント®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®)、アブロシチニブ(サイバインコ®):JAK(ヤヌスキナーゼ)を阻害して炎症やかゆみを抑える飲み薬。効果の実感が比較的早いとされますが、感染症リスクへの注意や定期的な血液検査が求められます
これらの治療は、症状の程度・これまでの治療歴・生活への影響・副作用リスクを総合的に考慮して選択します。
プロアクティブ療法(再発を減らすための維持治療)
湿疹が落ち着いた後も、見た目がきれいになった部位に週2〜3回程度、抗炎症外用薬を続ける方法です。
アトピー性皮膚炎では、表面が良くなっても皮膚の深い層に炎症が残っていることがあり、外用薬を急にやめると再燃しやすいことが分かっています。プロアクティブ療法は、この「見えない炎症」が治まるまで計画的に外用を続け、段階的に頻度を減らしていくやり方で、日本皮膚科学会のガイドラインでも推奨されています。ステロイドだけでなくタクロリムス軟膏などでも行われます。
「良くなったらすぐ全部やめる」のではなく、段階的に減らしていくことが再発を防ぐポイントです。
9. 日常ケア・再発予防(毎日の工夫でかゆみを減らす)
治療と並行して、生活の中でできることを整理します。
保湿
- 入浴後すぐの保湿を習慣にする(冬場はとくに大切)
- 乾燥が気になる部位はこまめに塗り直す
- 症状が落ち着いているときも保湿を続ける
入浴
- ぬるめのお湯(38〜40℃くらい)で、長湯は避ける
- 石鹸は低刺激なものをよく泡立て、ゴシゴシこすらない
- すすぎ残しがないようにしっかり洗い流す
衣類・寝具・環境
- チクチクする素材(ウールなど)は直接肌に触れないようにする
- 寝具のカバーはこまめに洗濯し、ダニ・ほこりを減らす
- こまめな掃除や換気を心がける
汗対策
- 汗をかいたら早めにシャワーで流すか、やわらかいタオルで押さえるように拭く
- 運動を制限する必要はないが、汗の処理が大切
かき壊し対策
- 爪を短く切っておく
- かゆいときは保湿する・冷やす・軽く押さえるなどの方法を試す
- お子さんの場合は、寝ている間のかき壊しへの工夫を医師に相談できる
ストレス・睡眠
- ストレスや睡眠不足はかゆみを強めやすいとされる
- 完璧を目指すよりも、「少しでも楽になる工夫」を探す姿勢が大切
10. FAQ(よくある質問)
Q1. アトピー性皮膚炎は何科を受診すればいいですか?
皮膚科で相談できます。湿疹の見た目や経過を確認し、アトピー性皮膚炎かどうかの判断と治療方針を一緒に決めていきます。お子さんの場合は小児科でも対応していることがありますが、皮膚の症状がメインであれば皮膚科が適しています。
Q2. ステロイドの塗り薬を長く使うのが不安です。副作用はありますか?
医師の指示のもとで部位や量、期間を調整しながら使えば、安全性は高いとされています。「怖いから少しだけ塗る」とかえって効果が不十分になり、治療が長引くことがあります。自己判断でやめると再燃しやすくなるため、ステロイド以外の外用薬への切り替えやプロアクティブ療法など、段階的に減らす方法を一緒に考えることもできます。不安があれば遠慮なくご相談ください。
Q3. アトピーのかゆみで夜眠れないのですが、どうすればいいですか?
かゆみの原因となっている皮膚の炎症をしっかり治療することが最も大切です。加えて、寝室の温度・湿度の調整、入浴後すぐの保湿、チクチクしない寝具への見直しなども補助的に役立ちます。かゆみが強い時期には抗ヒスタミン薬を併用することもあります。
Q4. 大人になってからアトピーが再発しました。良くなりますか?
アトピー性皮膚炎は慢性の疾患のため「完治」とは言いにくい面がありますが、適切な治療を続けることで症状がほとんど気にならない状態(寛解)を目指すことは可能です。近年は外用薬だけでなく注射薬や新しい内服薬など治療選択肢が広がっており、以前より良い状態を保ちやすくなっています。
Q5. 子どものアトピーで、保湿剤はいつ・どのくらい塗ればいいですか?
入浴後できるだけ早く、全身にまんべんなく塗るのが基本です。量の目安は、大人の人差し指の先から第一関節まで軟膏チューブから出した量(約0.5g)で、大人の手のひら2枚分の面積をカバーします(1FTU=フィンガーチップユニット)。季節や部位に応じて日中に塗り直すことも大切です。
11. まとめ(向日市・長岡京市・乙訓でアトピー性皮膚炎のご相談なら)
アトピー性皮膚炎は、かゆみと湿疹がくり返す慢性の疾患ですが、近年は保険診療で使える薬の選択肢が大きく広がっています。ステロイド外用薬を軸としつつ、非ステロイドの外用薬、プロアクティブ療法による再発予防、中等症〜重症には注射薬や内服薬まで──症状や生活に合わせた治療を組み立てることができます。
「かゆみが治らない」「ステロイドが不安」「子どもの湿疹が長引いている」──そうした悩みは一人で抱え込まず、皮膚科で相談してみてください。当院の診療内容については診療案内もご参考ください。初めての方は当院についてもあわせてご覧ください。
向日市・長岡京市・乙訓エリアでアトピー性皮膚炎が疑われる症状が続く場合は、自己判断せず皮膚科へご相談ください。WEB予約:https://furukawa.mdja.jp/ /アクセス:https://furukawa-skin-clinic.com/access/