アトピー性皮膚炎について
アトピー性皮膚炎は、かゆみの強い湿疹が良くなったり悪くなったりを繰り返す慢性的な皮膚疾患です。湿疹は左右対称に出やすく、乳児期、小児期、成人と年齢によって症状の出やすい部位や性状が異なるのも特徴です。
アトピー素因とは?
アトピー性皮膚炎の背景には、「アトピー素因」と呼ばれる体質が関与しています。
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家族にアトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などの病歴がある
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IgE抗体というアレルギーに関与する抗体を産生しやすい体質
こうした素因を持つ方は、皮膚のバリア機能が低下しやすく、乾燥やアレルゲンに対して過敏に反応してしまいます。
経皮感作と皮膚バリアの重要性
アトピー性皮膚炎では、皮膚のバリア機能が低下しており、アレルゲンが皮膚から侵入しやすくなります。この状態を「経皮感作」と呼び、体がそれらをアレルギーの原因物質(抗原)として認識し、炎症を引き起こすきっかけになります。乳児期に皮膚を健康な状態で保つことで将来のアレルギーを減らす可能性があると言われています。
アトピー性皮膚炎の治療
日常ケアの基本:保湿と抗炎症治療
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保湿:毎日の保湿は、皮膚のバリア機能を保つうえで不可欠です。乾燥を防ぐことで、アレルゲンの侵入やかゆみを抑える効果があります。
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外用薬(塗り薬):湿疹が出た場合には、早期にステロイドや非ステロイド(下記詳細)の抗炎症薬で炎症を抑えることが重要です。
以下のようなステロイドを含まない抗炎症外用薬が登場し、長期使用への不安が軽減されています。
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プロトピック®(タクロリムス軟膏)
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コレクチム®(デルゴシチニブ軟膏)
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モイゼルト®(ジファミラスト軟膏)
- ブイタマークリーム®(タピナロフ)
リアクティブ療法とプロアクティブ療法
▶︎ リアクティブ療法(Reactive Therapy)
湿疹が出たときにその都度外用薬で治療する方法です。比較的一般的に行われてきた方法ですが、再発しやすく、症状を繰り返しやすいという課題があります。
▶︎ プロアクティブ療法(Proactive Therapy)
近年では、湿疹が一度よくなったあとも、週に数回程度ステロイド外用薬や非ステロイド外用薬を継続して使用する方法が推奨されています。これにより、再発を予防し、症状のコントロールが長続きしやすくなるとされています。
日本皮膚科学会のガイドラインでも、プロアクティブ療法の有効性が支持されています。
さらに、中等度〜重度のアトピー性皮膚炎の方には以下のような全身療法が選択可能です。
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デュピクセント®(生物学的製剤)
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オルミエント®、リンヴォック®、サイバインコ®(JAK阻害薬)など
これらは、従来の治療で効果が不十分だった方にも有効であり、治療の幅が大きく広がっています。
まとめ
アトピー性皮膚炎は「よくなったり悪くなったり」を繰り返す疾患ですが、近年の治療法の進歩により、コントロールしやすくなってきています。
一人ひとりの症状や生活に合わせた治療計画をご提案いたしますので、「なかなか良くならない」「薬の使い方が不安」といったお悩みがある方も、ぜひお気軽に当院までご相談ください。