京都府向日市にある皮膚科・美容皮膚科クリニック

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円形脱毛症

円形脱毛症(Alopecia areata)とは?

円形脱毛症は、自分免疫細胞が誤って毛根を攻撃してしまい、境界がはっきりした抜け毛が突然あらわれる病気です。頭皮だけでなく、眉・まつげ・ひげ・体毛など全身どこでも起こり得ます。

よくあるタイプ

  • 単発型:突然1か所だけ丸く毛が抜ける
  • 多発型:複数個所に脱毛斑が生じる
  • 全頭型:頭髪がほとんど抜ける
  • 汎発型:全身の毛が抜ける

重症度は人により幅があります。国内外の最新ガイドラインでも、病型や重症度・病期に合わせた治療選択が推奨されています。

原因について

体質(遺伝的素因)、自己免疫、ストレス、感染・出産後などのいくつかの要因が重なって発症すると考えられています。ただし、「精神的ストレスだけが原因」ではありません。アトピー素因、甲状腺疾患、その他の自己免疫疾患を合併することがあります。

一般的な経過

  • 軽症の単発型の多くは数か月〜1年で自然に再生することがありますが、再発することもよくあります。軽症例で自分では脱毛斑に気付かず、知らないうちに治癒している例もよくみられます。
  • 広範囲例や長期化例では専門的な治療が必要です。

診断

視診・ダーモスコピー(拡大鏡)で特徴的所見(感嘆符毛など)を確認し、必要に応じて血液検査(甲状腺機能・自己抗体など)を行います。びまん性脱毛症・瘢痕性脱毛、真菌感染などを除外する必要があります。

 

治療法

外用・局所治療

  • ステロイド外用:自己免疫が誤って攻撃をしてしまっているのまずは免疫を少し落ち着かせる外用薬から治療することがほとんどです。
  • 局所ステロイド注射:限局した病変に有効なケースもあります。施術時に痛みが強く、ステロイドの副作用で皮膚が凹むこともあります。現在薬剤が入手困難で当院で治療は行っておりません。
  • 局所免疫療法(DPCP/SADBEなど):広範囲・難治例に専門施設で実施。かぶれ反応を利用する治療ですが、保険適応外で当院では施術行っておりません。
  • 光線療法(エキシマ/ナローバンドUVB):特殊な光を脱毛部に照射することで免疫を抑制させ、脱毛の改善に効果が期待できます。(現在当院には機器を置いておりません…)
  • 外用ミノキシジル(自由診療):ミノキシジルには発毛を促進させる作用があるため、早期に毛を生やしたい場合に適応になるケースもあります。

内服・全身治療

  • JAK阻害薬(例:バリシチニブ、リトレシチニブ 等)
    免疫反応を調整し発毛を促す新しい治療選択肢です。感染症リスクの増加、肝機能・脂質異常、帯状疱疹、血栓症リスクなど安全性チェックが必要で、定期採血ワクチン歴の確認を行います。対象年齢や適応条件、保険適用は薬剤ごとに異なり、当院では導入しておりません。必要に応じて基幹病院にご紹介させていただいております。
  • ステロイドパルス:免疫抑制剤を短期間に高容量使用する治療方法です。入院での治療となりますので、必要に応じて基幹病院にご紹介させていただいております。

 

よくある質問(FAQ)

うつりますか?

うつりません。自己免疫が関与する病気で、人から人へ感染することはありません。

 

ストレスだけが原因ですか?

いいえ。ストレスが誘因となることはありますが、免疫や体質など複数の要因が関わっています。

 

治りますか?再発しますか?

軽症例では自然に再生することもありますが、再発することもあります。重症例でも、適切な治療により発毛率の向上が期待できます。

 

新しい飲み薬(JAK阻害薬)は誰でも使えますか?

対象年齢や適応条件、安全性管理が必要となります。適応がある方には診察時にお声がけしておりますが、気になることがありましたらお気軽に受診時にお声がけください。

※本記事は一般向けの情報提供を目的としています。個別の診断・治療は症状や背景によって異なります。気になる症状がある場合は、受診のうえ医師にご相談ください。

 

ちょっとした思い出症例

大阪医科薬科大学病院で勤務していた頃、医局内で円形脱毛症に対するJAK阻害薬を初めて担当したことがあります。
その方は長く全頭型円形脱毛症で悩まれており、ちょうどオルミエント®(バリシチニブ)が使えるようになった時期でした。

新しいお薬であること、費用のご負担が大きくなる可能性があること、免疫を調整する薬のため定期的な検査が必要であることなどを丁寧にご説明し、
ご本人の強いご希望を確認したうえで投与を開始しました。

それまで何を試しても改善しなかった脱毛斑が、約1か月ほどで産毛が次々と生えてくきて、私自身とても驚きました。

医学はまだ発展の途上ですが、重症アトピー性皮膚炎に対するデュピルマブ乾癬や円形脱毛症におけるJAK阻害薬など、
これまで手立てが限られていた疾患にも新しい選択肢が生まれています。
一人ひとり背景が異なるからこそ、メリットとリスクを丁寧に共有し、納得のいく治療を一緒に選ぶ——
その大切さを改めて教えてくれた症例でした。


※本稿は個人が特定されないよう配慮のうえ要素を一般化しています。
※治療効果や経過には個人差があり、すべての方で同様の結果を保証するものではありません。適応・安全性は医師の診察により個別に判断します。


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