1. はじめに(皮膚の赤み・フケのような鱗屑がくり返す方へ)
公開日:2023-11-08/最終更新日:2026-02-11
「肌に赤い盛り上がりができて、白いかさぶたのようなものがポロポロ落ちる」「頭皮のフケがひどくて市販のシャンプーでは治らない」「まわりの人にうつるのではないかと不安」──こうした悩みがあるとき、その背景に乾癬(かんせん)が隠れていることがあります。
乾癬は、免疫の異常によって皮膚に慢性的な炎症が起こる病気です。感染症ではないため、人にうつることはありません。「癬」の字から水虫(白癬)と混同されやすいのですが、まったく別の病気です。
慢性ではありますが、近年は治療の選択肢が大きく広がっています。外用薬・光線療法・内服薬に加え、生物学的製剤(注射薬)やTYK2阻害薬(新しい飲み薬)など保険診療で使える治療薬が増え、症状がほとんどない状態(寛解)を維持できるケースも多くなっています。
皮膚科では、乾癬のタイプや重症度、生活への影響を確認したうえで治療を組み立てます。向日市・長岡京市・乙訓エリアで「この赤みは何だろう」「フケが長引いている」「関節も痛い」など気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
2. 乾癬とは(どんな病気?どんな人に多い?)
乾癬は、免疫の異常によって皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が著しく速くなり、慢性的な炎症が起きる病気です。
通常、皮膚の細胞は約1か月かけて生まれ変わりますが、乾癬ではそのサイクルが数日程度に短縮されるため、角質が厚く積み重なって銀白色の鱗屑(りんせつ:かさぶた状の粉)になります。乾癬にはいくつかの病型がありますが、約90%を「尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)」が占めます。
日本での有病率は約0.1〜0.3%と報告されています。欧米(2〜4%)に比べると少ないものの、近年は食生活やライフスタイルの変化に伴い増加傾向にあるとされています。男女比ではやや男性に多く、青壮年期(20〜50代)に発症することが多いですが、小児や高齢者でも起こります。
3. 主な症状(赤み・鱗屑・かゆみ・爪・関節の変化)
皮膚の症状
- 赤い盛り上がり(紅斑):境界がはっきりした、少し隆起した赤い斑
- 銀白色の鱗屑(りんせつ):白いかさぶた状の粉が表面に付着し、ポロポロはがれる
- かゆみ:約半数の方にみられる(強さには個人差がある)
- アウスピッツ現象:鱗屑を無理にはがすと、点状の出血が見られることがある
出やすい部位
- ひじ・ひざなどの伸側(外側)
- 頭皮(フケのように見えて気づくことが多い)
- 腰まわり・おしり
- すねの前面
- 爪
こすれや圧がかかる場所に出やすいのが特徴です。衣類のこすれ、ベルトや下着の締め付け部分に新しい皮疹が出ることがあり、これを「ケブネル現象」と呼びます。
爪の変化
乾癬の方の約半数に爪の症状がみられるとされています。
- 爪の表面に小さなくぼみができる(点状陥凹)
- 爪が厚くなる・変色する
- 爪の下に白い部分や黄色い部分ができる(爪甲剥離)
爪白癬(爪水虫)との区別が必要なこともあるため、気になる場合は皮膚科で確認してください。
関節の症状(乾癬性関節炎)
乾癬の約10〜30%に関節症状が合併するとされています。
- 指や足趾の関節の腫れ・痛み
- 朝のこわばり
- 腰やかかとの痛み
関節症状は皮膚の症状より生活への影響が大きくなることがあるため、「関節が痛い」「朝こわばる」「指が腫れている」などの症状があれば、皮膚科を受診した際にぜひ伝えてください。
注意
セルフチェックはあくまで目安です。乾癬は見た目が似ている病気も多いため、自己判断せず皮膚科で確認することをおすすめします。
4. 原因・悪化因子(免疫の異常と生活習慣)
乾癬はなぜ起きる?
乾癬の原因は一つに特定されていません。遺伝的な素因(なりやすい体質)と、環境要因が重なって発症すると考えられています。免疫系の中でT細胞やサイトカイン(IL-17、IL-23、TNFαなど)の働きが過剰に活性化し、皮膚に炎症を引き起こしているとされています。
悪化させやすいきっかけ
- こすれ・外傷(ケブネル現象:摩擦・引っかき・日焼けなど)
- 感染症(かぜ、扁桃炎などの上気道感染がきっかけになることがある)
- ストレス・疲れ・睡眠不足
- 肥満(内臓脂肪が炎症を促進するとされる)
- 喫煙・過度の飲酒
- 薬剤(一部の薬が乾癬を誘発・悪化させることがある)
- 乾燥(冬場に悪化しやすい方もいる)
一方で、適度な日光(紫外線)は乾癬の改善に役立つことがあり、夏に軽くなるケースも少なくありません。ただし、日焼けしすぎるとかえってケブネル現象で悪化することがあるため注意が必要です。
乾癬と生活習慣病
近年、乾癬の患者さんには肥満・高血圧・糖尿病・脂質異常症(メタボリックシンドローム)の合併が多いことが知られています。皮膚の治療と合わせて、全身的な健康管理にも目を向けることが大切です。
5. 似た病気との違い(脂漏性皮膚炎・白癬など)
乾癬は、他の皮膚疾患と見た目が似ていて紛らわしいことがあります。
- 脂漏性皮膚炎:頭皮・眉間・鼻のわきなどに赤み・フケが出る。乾癬と重なる部位(とくに頭皮)で区別が難しいことがある
- 白癬(水虫・たむし):真菌(カビ)による感染症。体部白癬は輪状の赤みを作ることがあり乾癬と間違えられることがある。「癬」の字が共通するため名前でも混同されやすい
- 湿疹・接触皮膚炎:かゆみが強く境界が不明瞭なことが多いが、慢性化すると乾癬との区別が難しくなることもある
- 扁平苔癬(へんぺいたいせん):紫がかった平たい丘疹で、乾癬とは色合いが異なるが紛らわしい場合もある
- ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん):胴体に楕円形の赤い斑が多発する。1〜2か月で自然に消えることが多いが、初期は乾癬に似ることがある
「フケが治らない」「赤みが長引く」といった症状だけでは判断が難しいため、皮膚科で皮疹の特徴を確認することが大切です。
6. 受診の目安(早めに相談したいサイン)
次のような場合は、皮膚科の受診をおすすめします。
- 赤い盛り上がりに白いかさぶた状のものが付いて、なかなか治らない
- 頭皮のフケが長引いている・市販のシャンプーで改善しない
- ひじ・ひざ・腰まわりなどに赤い斑がくり返し出る
- 爪が厚くなった・変色した・くぼみができた
- 関節が痛い・朝こわばる(とくに手足の指の関節)
- 以前「乾癬かもしれない」と言われたが治療を受けていない
早めに受診したいサイン
皮疹が急に全身に広がった、膿(うみ)を持つ小さなぶつぶつが広範囲に出た、発熱を伴う、関節の腫れ・痛みが強いなど、ふだんと違う強い症状があるときは早めにご相談ください。
7. 検査・診断
乾癬の診断は、多くの場合皮疹の見た目と分布で行います。
- 境界のはっきりした紅斑+銀白色鱗屑
- 好発部位(ひじ・ひざ・頭皮・腰まわりなど)
- 慢性にくり返す経過
典型的なケースであれば視診で診断がつきますが、他の疾患と区別しにくい場合は皮膚の一部を小さく採取して顕微鏡で調べる皮膚生検を行うことがあります。
乾癬性関節炎が疑われる場合は、関節のX線検査や血液検査(CRP、リウマチ因子など)を追加することもあります。また、生物学的製剤の導入を検討する際には、結核や肝炎ウイルスなどのスクリーニング検査が必要になります。
8. 保険診療での治療選択肢
乾癬の治療は、重症度と生活への影響をもとに段階的に組み立てます。「完全に治しきる」というよりも、寛解(症状がほとんどない状態)を維持して、温泉やプール、服装、仕事や対人関係などで気にならない状態を目指すのが治療のゴールです。
外用薬(塗り薬)──軽症〜中等症の基本
- ステロイド外用薬:炎症を抑える効果が高く、赤みや鱗屑を速やかに改善します。部位に応じて強さ(ランク)を調整します
- 活性型ビタミンD3外用薬(カルシポトリオール、マキサカルシトールなど):皮膚細胞の過剰な増殖を抑え、鱗屑を減らします。効果が出るまでに少し時間がかかりますが、ステロイドのような皮膚萎縮は起こりにくい
- ステロイド+ビタミンD3配合剤(ドボベット®ゲル/軟膏/ローション、マーデュオックス®軟膏):1日1回の塗布で両方の効果が得られ、治療の手間を減らせる
塗り方・塗る量で効果が大きく変わるため、使い方を一緒に確認しながら進めます。
光線療法──外用だけでは不十分な場合
紫外線の免疫調整作用を利用した治療です。
- ナローバンドUVB:波長311〜312nm付近の紫外線を照射。広い範囲の皮疹に有効で、副作用も比較的少ない
- エキシマライト/エキシマレーザー(308nm):限られた部位に集中して照射できるため、手のひらサイズなど局所的な皮疹に向く
通院して照射する必要がありますが、外用薬と組み合わせることで効果を高めることができます。
内服薬(飲み薬)──中等症〜重症で検討
皮疹の範囲が広い、再燃をくり返す、生活への支障が大きい場合に検討します。
- アプレミラスト(オテズラ®):PDE4阻害薬。免疫のバランスを整えて炎症を抑えます。使い始めに下痢や吐き気が出ることがありますが、多くは一時的です
- デュークラバシチニブ(ソーティクツ®):TYK2阻害薬。2022年に登場した新しい作用機序の内服薬
- エトレチナート(チガソン®):レチノイド(ビタミンA誘導体)。皮膚細胞の異常増殖を抑えますが、催奇形性があるため妊娠を希望する方には使えません(女性は服用終了後2年間、男性は6か月間の避妊が必要)
- シクロスポリン(ネオーラル®など):免疫抑制薬。効果は高いですが、血圧上昇や腎機能への影響があり長期使用には注意が必要です
- メトトレキサート:免疫を抑えて炎症をコントロール。乾癬性関節炎にも効果がありますが、肝機能や血球数の定期的なモニタリングが求められます
生物学的製剤(注射薬)──重症・難治例で検討
従来の治療で十分な効果が得られない場合や、乾癬性関節炎を伴う場合に検討されます。特定のサイトカイン(炎症を引き起こす物質)をピンポイントで抑えるため、高い効果が期待できます。
TNFα阻害薬
- インフリキシマブ(レミケード®)、アダリムマブ(ヒュミラ®)
IL-17阻害薬
- セクキヌマブ(コセンティクス®)、イキセキズマブ(トルツ®)、ブロダルマブ(ルミセフ®)、ビメキズマブ(ビンゼレックス®)
IL-23阻害薬
- グセルクマブ(トレムフィア®)、リサンキズマブ(スキリージ®)
IL-12/23阻害薬
- ウステキヌマブ(ステラーラ®)
生物学的製剤は高い効果が期待できる一方、感染症リスクの評価や定期検査が重要です。導入前に結核・肝炎ウイルスなどのスクリーニング検査が必要で、日本皮膚科学会の承認施設での導入が求められます。適応があると判断した場合は、導入可能な連携施設へご紹介します。
9. 日常ケア・再発予防(生活の中でできること)
スキンケア
- 保湿は毎日続ける(乾燥は鱗屑や皮疹を悪化させやすい)
- 入浴はぬるめのお湯で、ゴシゴシこすらない
- 鱗屑を無理にはがさない(ケブネル現象で悪化することがある)
生活習慣
- 適度な運動と体重管理を心がける(肥満は乾癬の悪化因子)
- 喫煙は乾癬の悪化や治療効果の低下に関わるとされるため、できれば避ける
- 飲酒は控えめにする
- 睡眠の確保とストレス管理を意識する
衣類・日光
- 締め付けが強い衣類やベルトは避ける(摩擦がケブネル現象のきっかけになる)
- 適度な日光浴は良い影響を与えることがあるが、日焼けしすぎは逆効果
周囲との関わり
- 乾癬は感染症ではなく、人にうつることはありません。名前の印象から誤解されることがあるため、必要に応じて説明することで温泉やプールなども気持ちよく利用できるようになります
10. FAQ(よくある質問)
Q1. 乾癬は人にうつりますか?
うつりません。乾癬は免疫の異常による炎症性の疾患で、感染症ではありません。「癬」の字から水虫(白癬)と混同されることがありますが、まったく別の病気です。温泉、プール、日常の接触で他の人にうつることはありません。
Q2. 乾癬は治りますか?いつまで治療が続きますか?
慢性の疾患のため「完治」は難しい面がありますが、適切な治療を続けることで症状がほとんどない状態(寛解)を維持することは可能です。治療薬の選択肢が増えた近年は、生活で気にならない状態を長く保てるケースも増えています。自己判断で中止せず、皮膚科で経過を確認しながら調整することが大切です。
Q3. 頭皮のフケがひどいのですが、乾癬ですか?何科に行けばいいですか?
頭皮の乾癬はフケや脂漏性皮膚炎と見た目が似ていて区別しにくいことがあります。皮膚科で皮疹の特徴を確認すれば診断がつきます。市販のフケ用シャンプーで改善しない場合は早めに皮膚科を受診してください。
Q4. 乾癬で関節が痛いのですが、皮膚科で診てもらえますか?
皮膚科で相談できます。乾癬の約10〜30%に関節症状(乾癬性関節炎)が合併するとされています。関節の腫れ・痛み・こわばりがある場合は受診時にお伝えください。必要に応じてリウマチ科等との連携を検討します。
Q5. 乾癬に食事制限は必要ですか?太っていると悪いですか?
特定の食べ物を厳しく制限する必要はありませんが、肥満は乾癬の悪化因子として知られています。バランスの良い食事と適度な運動で体重管理を心がけることが勧められます。過度な飲酒も悪化につながることがあるため、控えめにするほうがよいでしょう。
11. まとめ(向日市・長岡京市・乙訓で乾癬のご相談なら)
乾癬は、免疫の異常によって皮膚に慢性的な炎症が起きる病気で、人にうつることはありません。近年は治療の選択肢が大きく広がり、外用薬・光線療法・内服薬・生物学的製剤と、重症度や生活への影響に合わせた段階的な治療の組み立てが可能になっています。
「赤い斑が治らない」「フケが長引いている」「関節も痛い」──そうした気になる症状があれば、皮膚科での相談をおすすめします。当院の診療内容については診療案内もご参考ください。初めての方は当院についてもあわせてご覧ください。
向日市・長岡京市・乙訓エリアで乾癬(かんせん)が疑われる症状が続く場合は、自己判断せず皮膚科へご相談ください。WEB予約:https://furukawa.mdja.jp/ /アクセス:https://furukawa-skin-clinic.com/access/